平成23年度
平成21年度
平成20年度
平成20年度
平成19年度
平成16年度
平成16年度
平成15年度
平成15年度
平成14年度
平成13年度
平成13年度
平成12年度
平成11年度

佐藤 優

松岡 正剛

橋本 努

前野 隆司

保坂 俊司

末木 文美士

芹川 博通

鎌田 東二

中沢 新一

野田 正彰 / カール・ベッカー

田中 滋

櫻井 義秀 / 渡邉 学

島薗 進

洗 建

13.8.1

10.5.21

08.12.20

08.12.20

08.5.21

05.7.20

05.7.15

05.5.1

03.12.21

03.7.1

03.2.20

02.9.15

01.7.1

00.9.1

平成28年度

平成25年度

平成24年度

平成23年度

平成21年度

平成19年度

平成16年度

平成17年度

藤田 和敏

藤田 和敏

中井 裕子

藤田 和敏

笹部 昌利

伊藤 真昭

原田 正俊

上田 純一

17.9.20

14.5.10

13.9.25

12.5.10

10.6.21

08.8.1

07.3.1

06.2.1

 

 

平成23年度教化活動委員会研修会講義録

「危機の時代における宗教」

作家・元外務省主任分析官 佐藤優

 第十五回教化活動委員会研修会は佐藤優氏を招き、「危機の時代における宗教」というテーマで四回の連続講義をお願いした。佐藤氏は外務省において在ロシア日本大使館勤務、外務省国際情報局の分析官などを歴任、その幅広い政治的経験を通した講義は説得力がある。
 いま世界は、政治、経済、自然環境、あらゆる領域において危機的な状況にある。自然環境は新興国の経済発展に伴って益々悪化の一途をたどっており、世界経済は不安定で先の見通しを立てることができない。そして国際紛争の危険は増す一方である。
 そのような中、日本では現政権による憲法の改定の動きが活発になっている。戦争放棄をうたった第九条をはじめ、国民の権利を定めた二十条も改定の対象としている。現実を無視した平和の論理は単なる理想主義に過ぎないが、九条改定によって日本防衛よりも米国の世界戦略に巻き込まれ、武力行使を強いられる危険性は増すことになる。
 原発問題をはじめとして多くの問題に直面している我々は現政権の選択を慎重に見極めなければならない。佐藤氏は宗教団体こそ民主主義を守る砦であると喝破された。この危機の時代に我々宗教者の果たす役割とは何か。佐藤氏の講義をもとに宗教者の研鑽に期待したい。

2013年6月17日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成21年度教化活動委員会研修会講義録

「西の文明、東の文化」 -資本主義と仏教の背景-

編集工学者・日本文化研究者 松岡正剛

 明治の近代化に伴う社会の大きな変化と、それに続く戦前戦後にかけての歴史には、それ以前の歴史との間に大きな断絶と空白がある。明治以降は我々仏教者にとって苦難の時代であったが、その時々の先達によって困難を乗り越え今日に至ることができた。しかし今、宗教はその活力を失いつつあることは否めない事実である。それは今まで我々宗教者がその歴史の断絶と空白を埋め、歴史を検証する作業を怠ってきたからではないか。その作業をぬきにしてこれからの仏教の歩むべき道を見いだすことは難しい。我々僧侶の責任は重いのである。
  まずは僧侶の資質の向上をということで教化活動委員会を立ち上げ、第一回は「宗教と法制度」と題して洗建氏に六回の連続講義をお願いした。それから十年がたった。その間多くの先生方の協力を得て、宗教を取り巻く様々な分野の専門知識や経験を元に議論を展開していただいた。この講座をとおして僧侶の幾人かはその成果を元に、布教活動に生かしてくれるものと期待してのことであった。その成果のほどはまだ検証していない。しかし、十年間この講座を続けることができ、多くの参加者から好評を得たことは、これからの活動に希望を与えてくれる。
  今回は、十年という一つの節目を迎えたこの講座の講師に、現在幅広い分野で活躍しておられる松岡正剛氏を迎え、これからの世界を見る見方を提示していただいた。この研修会のために貴重な時間を割いていただいた松岡正剛氏に感謝申し上げる。我々僧侶が何をなすべきかという大きな問いに、貴重な示唆を与えていただいた。そのことに対して我々僧侶はどう答えるのか、これからの仏教界を担う僧侶に期待したい。

2010年5月21日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成20年度教化活動委員会研修会講義録
「経済倫理と現代イデオロギー」
北海道大学大学院経済学研究科准教授 橋本 努 氏

 本年九月、アメリカでは住宅関係のローン、サブプライムローンが焦げついて、住宅関係の金融大手二社がつぶれるのではないかと危惧されている。かつて日本のバブル経済が崩壊した時と全く同じ問題がアメリカでも生じているのである。今アメリカ経済は危機に瀕していて、その影響は全世界に波及しようとしている。また日本でも食料品の賞味期限改竄問題や、農薬
混入問題などが頻発して、今や企業の倫理や市場自由経済そのもののあり方が問われている。
あらゆる社会問題の底流には経済問題がある。経済の行方を見極めずにこれからの世界を理解することは不可能である。宗教も又例外ではなく、我々はこの現実を見極めずに現代社会に法を説くことは出来ない。
このたびの北海道大学の橋本努氏の連続講義は我々僧侶を大いに啓発していただいた。紙面を借りて御礼申し上げる。これを機に多くの僧侶がこの世界の現実を認識し、これからの世界のあり方を考える契機となることを願うものである。

2008年12月20日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成20年度教化活動委員会研修会講義録
「脳科学と哲学・宗教  受動意識仮説は脳と心の問題を解決できるのか?」
慶應義塾大学教授  前野 隆司 氏

祖師達磨とその弟子慧可との問答がある。「私の心はまだ不安で安らぐことかありません」という弟子に対して「その心を持ってきて見せてみよ」と達磨はい う、弟子は「その心を求めて来たのですが見つかりません」と答えると達磨は「これでおまえを安心させてやったぞ」と答えている。この達磨安心の問答は、我 々僧侶が究明すべき究極の問題であり、心とは何か、自分とは何かの探求はおおくの宗教が取り組んできた大問題である。
現代の科学では人間の心は何処に存在し、どのような仕組みになっているのかということを解明する努力が続けられている。ロボットエ学の分野では少しでも人間に近い人工知能の研究が進められている。その成果はめざましく多くの謎が解明されてきた。
この現代科学の成果は我々仏教僧侶が追い求めてきた心の問題と対立するものではなく、その道筋の正しいことを違う視点から証明している。人間の心の正体 を突き止めようとする努力はこれからも続けられるだろう。同じ心の問題を扱う我々僧侶が、現代科学の成果の一端にふれる機会を与えていただいた慶應義塾大 学教授前野隆司氏に感謝申し上げる。これからの研究の発展とその成果に注目していきたい。

 

2008年12月20日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成19年度教化活動委員会研修会講義録
「仏教の盛衰に何を学ぶか」
麗澤大学教授 保坂 俊司 氏

平成十一年から始まった教化活動委員会の研修会講義録は今回十冊目を迎える。その間十一名の先生方に様々の分野から現代社会と仏教について講演をいただいた。その講義録は我々僧侶がこれからの仏教のあり方を考える上で貴重な資料となっている。
今回は、麗澤大学教授保坂俊司氏に講師をおねがいし、何故インドにおいて仏教が興り、興隆し、そして衰微していったのかと言うことについて論じていただいた。そして仏教の発祥とその伝搬の歴史をたどり、仏教の特徴とともにその弱点をも指摘して、仏教の今日における存在意義を提示していただいた。
今からおよそ二千五百年前、釈尊は自らの国が近隣の大国に攻撃され飲み込まれるのを前に、暴力でもって抵抗することはしなかった。国が滅びた後も悉有仏性、悉皆成仏を説き、不殺生を説く仏教の理想を実現するため、自らの教えを説き広めていった。
二〇〇八年の今日、自らの正義を振りかざして武力で他者を従わせようとすることが、結果として何をもたらすか、現代の世界情勢を見れば明らかである。戦後、世界の国々の一員として、武力による問題解決を放棄し、人間の知恵を尽くして、問題解決にあたることを是としてきた、今までの日本の生き方は、我々仏教徒の目指すところであり、これからもそうあり続け
てほしいと願う。そういう意味に於いても現代における仏教の果たす役割は大きいと確信する。
四回に亘って相国寺の研修会の講師を務めていただいた保坂俊司氏に感謝申し上げ、我々仏教徒の活躍を期待したい。

 

2008年5月21日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成16年度教化活動委員会研修会講義録
「日本仏教の可能性」
東京大学教授 末木 文美士 氏

日本に仏教が伝わって以来、それまでの古来の宗教である神道と習合することで日本独自の仏教を発展させたのであるが、日本の近代化という大きな変革の中で、伝統仏教もその性格を変化させてきたことは間違いない。しかし明治以後の近代化の過程の中で仏教を論じたものは少なく、我々既成仏教の僧侶も、日本仏教の伝統とその近代的意味を問うことを怠ってきた。
既成仏教が葬式仏教として批判の対象となって久しいが、葬儀において仏教はいまだに重要な役割を担っていることにかわりはない。我々はその批判にまともに答えてきたとはいえず、葬儀の意味、死者との関わり、といった問題を正面からとらえ直すという姿勢を欠いてきたのではないか。
この連続講義の講師である末木文美士氏は、我々臨済禅では重要な語録の一つである「碧巌録」の研究においても知られている著名な学者である。今回は近代以降の日本仏教の問題点を取り上げていただいたが、貴重な時間をこの研修会のために割いていただいたことに感謝する。
末木氏がこの研修会で提示された事柄は、整理し、とらえ直さなければならない問題として吾われの前にある。これからの日本仏教をになう僧侶がこれらの諸問題に積極的に取り組んでいくことを期待する。日本仏教の可能性は吾われ僧侶の努力と働きに掛かっている。

 

2005年7月20日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成16年度教化活動委員会研修会講義録
「仏教の経済倫理と現代」
淑徳短期大学教授 芹川 博通 氏

宗教と経済という我々宗教者にとってなじみの薄い課題を取り上げたのだが、宗教活動も経済構造を離れて存在することはできない。経済は宗教活動に大きく影響を与えるものであり、宗教と無縁のものではない。
江戸時代の僧侶、鈴木正三は、封建社会の制約の中ではあったが、「いかなる職業も仏道修行である」と説き、仏教の職業倫理を説いた。特に商人に対して、「ひたすら利潤を追求せよ、しかし福利を得てもそれを楽しんではならない、一筋に国土のため万民のためとおもい、自国のものを他国に移し、他国のものを我国に持来て、無碍大自在の人となって、乾坤に独歩すべし」と説いている。つまり利潤の追求、資本の蓄積、商品の流通という、発達しつつあった資本主義の本質を的確に押さえて、商人のあるべき姿を僧侶の立場から説いている。
戦後、日本はめざましい経済成長を続け、大きな発展を遂げたが、バブルの崩壊以後、日本経済は破綻し、企業モラルの低下、政治家、官僚をはじめ組織の腐敗が顕在化し、その信頼を失墜している。このような大きな社会変動の中で、既成仏教は時代の趨勢に影響を受け、流され続けるばかりで、立ち止まり、自らの教義にたって時代をとらえ直し、将来を展望する努力を怠ってきたのではないか。
芹川博通氏による仏教の経済倫理に関する4回の連続講義は、宗教の側から経済をとらえ直す視点を我々に呈示してくれる。この講義録を基に、宗教者自身が宗教者の立場から経済をとらえ直す手がかりとしたい。
講師を引き受けてくださった芹川氏に感謝申し上げると共に、多く宗教者のご清覧を切に乞い願う。

 

2005年7月15日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成15年度教化活動委員会研修会講義録
「神と仏の精神史再考」-神仏習合の歴史とその意義-
京都造形芸術大学教授 鎌田 東二 氏

江戸時代の思想家富永仲基は「加上の論理」と言うことを言っている。それは膨大な仏教の経典はすべてが釈尊の言った言葉であるはずがない。後生のものが付け加えてできあがったものであるということである。インドで発祥した仏教は南インドに伝播し、中央アジアを通り様々な仏教の分派を生み、チベット、中国、朝鮮半島そして日本にもたらされた。仏教はその伝播過程でそれぞれの国家や地域の風土や民俗宗教、文化に影響され、又影響を与えながら、それぞれ独自の仏教を発展させていったのである。今や仏教はアメリカやヨーロッパにも伝播し、独自の仏教を開花させつつある。それぞれの地域の文化や風俗に裏打ちされて力強く開花することを期待したい。そういう意味では、ただ一つの根本教典を持つキリスト教やイスラム教とは異なり、仏教は原理主義からは一番遠いところにあると言ってよい。
日本においても、仏教は民族の土着の宗教であった神道を取り込み整理して神仏習合という独自の日本仏教を築いたのである。ところが明治政府は近代化政策の中で神仏分離令を発布し、国家にとって都合の悪い仏教の力を弱め、新たに天皇を中心としたキリスト教的、一神教的な神道としての国家神道をつくりあげていったのである。そしてその体制はやがて国家主義、軍国主義と結びつきファシズムの道を突き進み、第二次世界大戦で日本の侵略戦争はアメリカによる原爆投下という悲人間的なホロコーストによって終結したのである。戦後アメリカによる日本の民主化が図られ、国家神道は排除されたのだが、現在に至るまで日本人自身による過去の失敗の反省と整理はなされないまま、神道と言えばほとんどの日本人は国家神道を思い浮かべるのである。
このように未だに天皇を中心にすえた国家神道は命脈をたもっているが、それは長い神道の歴史の大きな流れのなかの一部にすぎない。国家神道とは違って、地域の神社や祠をお参りする地域の人々によって維持されている神社は多くある。それは八百万の神を信じる古来の神道信仰であり、そこには一神教的、排他的な要素はないのである。仏教に活力を与え発展させてきたこのような古神道をもう一度とらえ直し、仏教と神道の関係を整理し、新たな関係を模索する努力はこれからの仏教にとって必要である。
そのような意味で4回にわたって行われた神道学者鎌田東二氏の連続講義は大変ユニークであり示唆に富んでいる。「もっと人間は馬や鹿のように毅然とした霊性を持つべきです。馬鹿になると言うことは霊性を高めると言うことです。・・・ 大馬鹿になるということは、自然の中にある自然の道徳律みたいなものに近づいていく、人間がつくりあげてきた無駄なことを超えていくと言うことです」という鎌田氏の言葉は、我々仏教者が共有する世界観である。この講義を基に神道と仏教の関係をもう一度つくりなおしていくための出発点としたい。

 

2005年5月1日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成15年度教化活動委員会研修会講義録
「一神教と多神教」
中央大学教授 中沢 新一 氏

 2001年 9月、テロによるニューヨーク世界貿易センタービル破壊以降、アメリカはアフガニスタンへの攻撃を開始し、2003年5月には、アメリカのテロ集団掃討作戦の一環として、イラクに対する軍事攻撃を始めた。
世界は、アメリカを中心として、武力によって国際問題を解決しようという傾向を強めるなか、日本ではそれを受けて、イラクへの自衛隊の派遣を検討している。
近年、日本においても北朝鮮の拉致問題をきっかけに、アメリカの力を背景に問題を解決しようという傾向を強め、武力による国際問題の解決を否定した、日本国憲法を改正しようとする大きな流れがある。それは、宗教法人法の改定をはじめ、教育改革問題、有事関連法案等、現在目の前にある危機意識を背景に、基本的人権を制限しようとする現在の政治の流れと連動しており、日本は悪い方向に進もうとしているのではないかという危惧を感じる。
現実に、アメリカは戦争の終結を宣言したにもかかわらず、イラクの国情は、未だに安定せず、テロによる攻撃が活発化し、アメリカ兵をはじめ多くの犠牲者を出し続けている。歴史の長い射程で眺めてみても、武力に頼った問題解決の方法は、問題の本質を解決するどころか、益々複雑な問題を生み出すことのほうが多い。最後はお互いの知恵を絞った話し合いによる解決しかないのである。
釈尊は、大国の力による侵略を前にして、仏教により人の心をつかみ、それによって自らの理想を実現しようとされた。悉有仏性、悉皆成仏を説き、不殺生を説く仏教の理想を実現するためにも、我々仏教僧侶は、武力による問題解決ではなく、あらゆる人間の知恵を尽くして、問題解決にあたることを説いていかなければならない。護憲を説く者が、時代遅れという謗りを受ける現在の政治状況であるからこそ、戦争による問題解決を放棄する、日本国憲法の精神を訴えることが重要である。仏教の世界観こそ、これからの世界を救うことができると信じる。
今回の研修会は、現在もっとも活躍中の宗教学者、中沢新一氏に四回にわたって連続講義をお願いした。多忙な中、快く引き受けて頂いたことに感謝する。チベット仏教の世界に身を投じ、実践された中沢氏の仏教に対する期待は、我々と共有するものである。現在を見極め、仏教の理想を未来に向かって実践していくために、この講義録はすべての僧侶にとって啓発の書となると確信する。多くの宗教者に御清覧を請う。

 

2003年12月21日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成14年度教化活動委員会研修会講義録
「宗教と教育」
京都女子大学教授  野田 正彰 氏

京都大学教授 カール・ベッカー 氏

近年、学校教育における荒廃が問題となり、情操教育、ゆとり教育、道徳教育、宗教教育などの必要性が論議され、教育改革が進められている。
日本の学校教育の歴史は明治以降の100年ほどであり、長い射程で眺めれば現在の教育はその結果であるといえる。特に戦後日本の教育はそれ以前の教育の伝統を切り捨て来たが、日本の長い歴史の中で仏教寺院が教育に果たしてきた役割は大きい。我々臨済宗の師弟関係には長い歴史とその検証に耐え培われてきたものがあり、現在もその伝統は生きている。その伝統が現代社会の中で持つ意味と可能性をもう一度検証することは我々にとって重要である。
しかし国家が関与する学校教育を考えるとき、憲法に定められた、信教の自由と政教分離の原則をはなれて論じることはできない。それを無視した教育は人間の尊厳を大きく損なうことになるからである。教育は多様な側面と機能を持っており、広がりと奥行きのある問題である。また学校教育だけが教育の場ではなく、広い分野を視野に入れた論議が必要である。
今回の研修会は教育問題を取り上げ、現在ご活躍中の京都女子大学教授、野田正彰氏と京都大学教授、カール・ベッカー氏のお二人の先生方にそれぞれの立場から教育について問題提起をして頂いた。多忙な中をこの研修会のために時間を割いていただいたお二人の先生方に感謝申し上げるとともに、この講義録が多くの宗教者のお役に立つことを願うものである。

 

2003年7月1日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成13年度教化活動委員会研修会講義録
「宗教法人へのまなざし」-宗教法人法改正をめぐって-
龍谷大学教授 田中 滋 氏

本書は2001年2月23日、4月24日、7月27日の3日間わたって相国寺会議室で行われた連続講義の記録である。講師の龍谷大学教授田中滋氏とは古都税問題以来のお付き合いである。
古都税問題は京都市が拝観者に課税をするため、寺院に徴税義務を負わせるというもので、1983年に京都市議会において審議抜きで可決され、1985年7月に実施されたのだが、1987年にわずか1年半あまりで廃止された。
京都市がその構想を明らかにしてから、6年近い年月を経て終結したのだが、その間京都仏教会は一貫して「拝観客から税金は取れない」、「信教の自由、政教分離の原則に違反する」として反対運動を繰り広げ、条例を廃案に持ち込んだ。その過程で私たちは僧侶自身の宗教者としての自覚、認識のなさを見せつけられたのである。この問題が持ち上がり、解決までに長期間を費やさざるを得なかった最大の原因は仏教寺院、僧侶の側にあった。その反省にたち、京都仏教会は<宗教と政治検討委員会>を開設し、学者の先生方を交えて多様な社会問題を取り上げ検討し、宗教者として提言を行い、運動を展開してきた。
京都の景観問題では京都ホテルの高層化反対運動、カルト問題や日弁連の宗教被害者に対するガイドラインの問題では日弁連の宗教に対する無理解を指摘し、討論を行ってきた。宗教法人法改正問題では、京都仏教会とともに、相国寺は改正法によって義務づけられた書類の提出拒否という仕方で反対を続けている。まさに信教の自由、政教分離の原則を脅かす重大な問題であるにも関わらず、大半の宗教者はこの重大性を認識せず、無原則に受け入れ、従っている。
20年前私たちが戦った古都税問題の反省は、多くの宗教者の意識を変えるまでには至っていない。しかし少数ではあっても、呼びかけに理解を示し、問題意識を持っている宗教者は増えた。またその道筋を作ることができたことは、将来の展望に光を投げかけている。相国寺の教化活動委員会がその道筋への案内役としての役割を果たすことを願う。
田中滋氏は京都仏教会<宗教と政治検討委員会>のメンバーとして様々な助言、激励をいただき、京都仏教会に関わってこられた。その経験を基に、我々宗教者が社会からどのように見られ、期待されているか。また現代社会において僧侶の社会的役割とは何か、という問題を提示して頂き、これから我々は何をなすべきかということを提言頂いた。混迷を深める現代社会において、私たち宗教者は今世紀、どのような未来を提示することができるのか。それは宗教者の重要な役割である。

 

2003年2月20日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成13年度教化活動委員会研修会講義録
「現代社会とカルト問題」
北海道大学助教授 櫻井義秀 氏
南山大学教授    渡邉  学 氏

相国寺教化活動委員会の研修会も三年目を向かえ、現在活躍中の先生方の講義を中心に、一般の方々の参加も得て活発な討論が行われるようになりました。ますます多くの方々にご参加いただき、この研修会を通して現在われわれをとりまくさまざまな問題に対する理解を深め、討論を重ね、お互いに研鑽し、社会に向け僧侶として発言し、社会参加をしていただくことを望むものであります。
今回は、東京大学教授島薗進氏のカルト問題に関する講義に続き、北海道大学助教授櫻井義秀氏に平成13年9月、11月の2回、南山大学教授渡邉学氏に平成 14年1月、4月の2回、それぞれ相国寺会議室にて講義して頂いたものをまとめたものであり、多くの宗教者の皆様の今後の活動のお役に立つことを願うものであります。

 

2002年9月15日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成12年度教化活動委員会研修会講義録
「宗教集団の内閉化と批判のあり方」
東京大学教授 島薗 進 氏

当山の教化活動委員会もはや2年目に入った。第1回の研修会のテーマとしてとりあげた宗教法人法の問題に続き、今回は、その宗教法人法改正の発端となったオウム真理教の事件をはじめとして、近年その活動が社会問題となっている宗教団体、特に、いわゆるカルトと呼ばれる集団の問題をとりあげた。
講師として、現在もっとも活躍中の宗教学者である、東京大学教授島薗進先生に4回連続講義をお願いしたところ、こころよくお引き受けいただき、カルト集団の問題を中心に現代宗教を分かりやすく丁寧に解説していただいた。
本書は2000年5月から11月にかけて4回にわたり行われた研修会の講義録である。
本書を通じ、現代宗教の動向と、近年多くの信者を集めている新興宗教集団の問題点を明らかにすることにより、我々既成仏教教団の抱える問題点に光を当て、これからの教団の方向を探る上で大いに参考となることを確信する。どうか多くの方々の高覧を乞い願う次第である。

 

2001年7月1日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成11年度教化活動委員会研修会講義録
「宗教と法制度」
駒澤大学教授 洗 建 氏

平成元年に、京都仏教会で「宗教と政治検討委員会」を設置し、さまざまな問題をあらゆる角度から検討してきた。大きく変動する時代を感知し、この社会情勢を見極め、仏教と国家、政治と宗教の在り方を追究することは重要な課題であり、且つ有意義なことであるとの認識でのことであった。
今年で十二年目を迎えるその活動を通じ、京都仏教会とその構成寺院は、従来以上に社会から注目される存在となった。そして今や、諸宗教勢力の中枢的存在として、また宗教にかかわる諸問題に取り組むための情報発信源としての役割を果たしているのである。
そのようなことから、わが宗派においても「宗教活動とは何か」を問い直すことが、当然求められてくる。そして何よりも僧侶自身が何を考え、何をするか、まずそれ等に対する能力を身につけることこそ先決ではなかろうかということで昨年相国寺本山に「相国寺教化活動委員会」を開設し、委員会を組織し、研修会をはじめさまざまな活動をしていくことになったのである。
その第一回目の研修会として「宗教法人法」の問題をとり上げ、講師に駒澤大学の洗建教授を迎え、「宗教と法制度」というテーマで六回にわたり連続講義を行っていただいた。
本書は一九九九年五月から二○○○年三月にかけて開催されたこの六回の連続講義の講義録である。
本来我々宗教者が必ず認識しておかなければならない宗教法人法の趣旨とその精神を、わかりやすくていねいに解説したものとして、他に類例を見ない貴重な資料となっており、すべての宗教者にとって必読の書であると確信する。
このたび本書が刊行のはこびとなったことは、誠に法幸にたえないことであり、どうか大方の御清覧を切に乞い願う次第である。

 

2000年9月1日

相国寺住職 有馬 賴底

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ここから相国寺研究

平成28年度教化活動委員会研修会講義録
「『相国寺史料を読む』」
講師 藤田和敏氏

 

 今年は白隠禅師二五〇年遠諱の正当年にあたり、臨済宗・黄檗宗は合同で遠諱事業に取り組んでいる。「隻手音声」の公安を創出したことで知られる白隠禅師は、僧侶養成のあり方を一新する功績を残し、日本臨済宗中興の祖と位置付けられるに至った。
江戸時代の臨済宗・黄檗宗は、禅の再興に心血を注いだ白隠禅師や宇治万福寺の開山隠元禅師の事蹟を中心に振り返られることが多い。しかし、白隠禅師や隠元禅師がいかに偉大であったとしても、彼らを支えた僧侶たちが属する宗門との関わり合いなしに優れた業績を残すことはできなかったであろう。個々の禅僧の思想的営みとともに、組織としての宗門のあり方を考察することによって、新たな江戸禅宗史を構築することができるのではないだろうか。
今回の研修会は、相国寺一山の古文書調査を担当する寺史編纂室研究員藤田和敏氏が、江戸時代における相国寺の史的展開を分析したものである。江戸時代の寺院史を振り返ることによって、現代を生きる我々の活動指針を見いだすことができれば幸いである。


2017年8月1日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成25年度教化活動委員会研修会講義録
「宗門と宗教法人を考える」
講師 藤田和敏氏

 

近代における宗門の歴史は、国家権力との関わり合いの中で展開してきた。国家神道体制然り、戦時中の宗教統制然りである。神道を優位とする国家の宗教施策を前に、仏教は苦闘を強いられたのである。
 そのような中でも、宗門の自治を守り抜き、法統を後世に伝えようとした先人が相国寺派には存在した。神道の国教化に敢然と立ち向かった荻野独園禅師、宗門の運営の近代化に尽力した小畠文鼎和尚は、それら先人の代表である。彼らの営為に対して正当な歴史的評価を与えるとともに、その功績を将来に語り継ぐことは、現代の我々にとって重大な責務であろう。
 今回の研修会は、相国寺一山の古文書調査を担当する寺史編纂室研究員藤田和敏氏が、明治以降における相国寺派の歴史的展開を明らかにしたものである。相国寺派僧侶の努力の跡をたどることが、これからの寺院運営に展望と活力を与えることに期待したい。


2014年5月1日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成24年度教化活動委員会研修会講義録
「室町時代の相国寺住持と塔頭」
講師 中井裕子氏

 相国寺研究第六巻は、相国寺史編纂室中世編担当の研究員中井裕子氏が、平成二十四年十一月から十二月にかけて三回にわたり発表された研究成果の講義録である。新しく収集された資料に基づき、今まで抜け落ちていた部分を補填完成させる試みである。今までの研究の一端を、一般の方々にもわかりやすく説明していただいている。今後の研究の進展に期待したい。

2013年9月21日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成23年度教化活動委員会研修会講義録
「相国寺本山所蔵古文書の全容と新出史料の紹介」
講師 藤田和敏氏

 相国寺は、二〇一〇年より寺史編纂事業を開始した。本事業は、小島文鼎師による『相国寺史料』の成果を踏まえ、新たに相国寺の開山から現在に至るまでの歴史を明らかにすることを目的としている。
 本事業の一環として、本山をはじめとする一山全体に所蔵されている古文書の調査・整理を進めている。今回の講義は、その作業を担当している編纂室研究員の藤田和敏氏が、本山所蔵の古文書の概要について解説したものである。
 今後、更に古文書の調査・整理が進展し、新たな研究成果が生み出されることを期待したい。

2012年2月9日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成21年度教化活動委員会研修会講義録
「幕末動乱の京都と相国寺」
講師 笹部昌利氏

 今回の相国寺研究は、未整理であった相国寺文書類の中から、新たに出てきた薩摩藩邸に関する史料を参考にしながら、幕末、維新期の京都と相国寺の状況を読み解いていただいた。近世以降の歴史は今まであまり正確には捉えられて居らず、誤解されてきた部分も少なくない。いま相国寺の近世以降の歴史を振り返り検証することは重要な仕事である。相国寺文書類の多くはいまだ未整理の状態であり、ここで取り上げられたものはその一部に過ぎないが、この相国寺文書に興味を持ち、この講座を引き受けていただいた笹部昌利氏に感謝するとともに、これからの研究成果に期待したい。

2010年6月21日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成19年度教化活動委員会研修会講義録 相国寺研究 三          
「近世の相国寺」
京都橘大学非常勤講師 伊藤 真昭 氏

相国寺は二〇〇七年、開基足利義満六百年忌、相国寺第三世空谷明 應六百年遠諱、第九十二世西笑承兌四百年遠諱を修行し、その記念として西笑和尚文案一巻を上梓した。また相国寺の未整理の様々な史料の整理に取りかかったのである。
その史料の整理にあたっていただいた学者の一人が、今回相国寺研究の講師を務めていただいた伊藤真昭師である。西笑和尚文案やその他の史料を整理する途中、新しく判明した史実などを交え、わかりやすく解説していただいた。本書はその講義録、相国寺研究第三巻である。
相国寺の史料はまだまだ未整理のものが多く存在するが、これからの研究が待たれる。この講義録が巻を重ね、わかりやすい相国寺の資料集として、本派の住職方の役に立つと共に、一般の読者に資すれば幸いである。

2008年8月1日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成16年度教化活動委員会研修会講義録 相国寺研究 二          
「中世の禅宗と相国寺」
関西大学文学部教授 原田 正俊 氏

相国寺は足利義満によって明徳三年(一三九二)に創建されて以来、実に六百年以上に渡って幾多の盛衰を経てこの地にその命脈を保ってきた。その過程は必ずしも、栄光と発展の歴史ばかりではなく、数々の困難と、法難の時代があり、その時代に生きた相国寺の僧侶の努力によって復興と発展がなされてきたのである。その歴史を検証し、解釈し直すことは、相国寺の未来を見据え発展を期するために欠かせない作業である。
相国寺の歴史的資料としては「相国寺史料」はじめ数点存在するが、いずれも専門書の域を出ず一般には参照しにくいのが実情である。又創建から現在に至るまでの通史は存在せず、特に近世以降の歴史を扱った史料は少ない。相国寺の近世以降の史料としては「役者寮日記」、「参暇寮日記」などが知られているが、これらはまだ手がつけられていない。
相国寺教化活動委員会が主催する相国寺研究は、相国寺にまつわる様々な歴史資料を基にわかりやすく解説するとともに、近世以降の歴史に関しても発掘、研究し、相国寺の理解を深めることを目的としている。
本書は相国寺研究の第二回目の講義録である。講師をお引き受けいただいた原田正俊氏に感謝申し上げるとともに、多くの方々が本書によって相国寺の理解を深めていただくことを願うものである。

2007年3月1日
相国寺住職 有馬 賴底

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平成17年度教化活動委員会研修会講義録 相国寺研究 一          
「相国寺の歴史」
京都府立大学教授 上田 純一 氏

相国寺は足利義満によって明徳三年(一三九二)に創建されて以来、実に六百年以上に渡って幾多の盛衰を経てこの地にその命脈を保ってきた。その過程は必ずしも、栄光と発展の歴史ばかりではなく、数々の困難と、法難の時代があり、その時代に生きた相国寺の僧侶の努力によって復興と発展がなされてきたのである。その歴史を検証し、解釈し直すことは、相国寺の未来を見据え発展を期するために欠かせない作業である。
相国寺の歴史的資料としては「相国寺史料」はじめ数点存在するが、いずれも専門書の域を出ず一般には参照しにくいのが実情である。又創建から現在に至るまでの通史は存在せず、特に近世以降の歴史を扱った史料は少ない。相国寺の近世以降の史料としては「役者寮日記」、「参暇寮日記」などが知られているが、これらはまだ手がつけられていない。
相国寺教化活動委員会が主催する相国寺研究は、相国寺にまつわる様々な歴史資料を基にわかりやすく解説するとともに、近世以降の歴史に関しても発掘、研究し、相国寺の理解を深めることを目的としている。
ここに第一回の講義録として京都府立大学教授、上田純一氏の「相国寺の歴史」を上梓する。三回に渡る講義を引き受けていただいた上田純一氏に感謝するとともに、多くの方々がこの相国寺研究シリーズによって相国寺への理解を深めていただくことを願うものである。

2006年2月1日
相国寺住職 有馬 賴底

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