十六羅漢図
第一 賓度羅跋ら惰闍尊者
陸信忠(リクシンチュウ)筆 明時代
縦97.0 横51.0 相国寺蔵
十六羅漢とは、仏の命を受けて永くこの世に住し、衆生を済度する十六人の大阿羅漢のことで、阿羅漢とは、一切の煩悩を断って尽智を得、世人の供養を受けるにたる聖者のことである。十六人それぞれの役割があり、それぞれの住居も決まっている。
わが国には古くから羅漢の名画が、おびただしく渡来されているが、当寺に伝わるこの陸信忠筆の十六羅漢も、古来声価の高いものの一つである。
浙江省東部にある港、寧波は、日本の貿易船が寄港するところとして貿易史上重要な港であるが、この地方には仏画師の集団があり、羅漢、涅槃、十牛図など寺院で必要とする仏画を制作していた。彼らの作品が日本へ請来されて、各寺院へ収められたのである。この十六羅漢の筆者、陸信忠も元代に寧波地方で活躍した一人で、全十六幅各々に「慶元府車橋石板巷陸 信忠筆」と肉眼では分からないほど小さな字で署名がしてある。慶元府は、南宋の慶元元年(1195)より、元の至元14年(1277)に慶元路に改称されるまで用いられた寧波の呼称である。