浴 室
相国寺の浴室は宣明(せんみょう)と呼ばれ、1400年頃創建されたとみられます。現在のものは、慶長初年(1596)に再建されたもので、平成十四年(2002)六月に復元修復されました。 宣明とは、宋の禅宗建築を描いた巻物「大唐五山諸堂図」の中で風呂を描いた「天童山宣明様」という図にあるように、浴室の別名です。 首楞厳経のなかに、十六人の菩薩が風呂の供養を受けた際、跋陀婆羅菩薩を始め菩薩達が忽然として自己と水が一如であることを悟ったことが記されています。そのときの跋陀婆羅菩薩の言葉に「妙觸宣明、成仏子住」とあり、宣明とは明らかであり、はっきりとしている言う意味です。この故事にならい禅宗寺院の浴室は宣明と呼ばれ、跋陀婆羅菩薩をお祀りしています。禅宗では「威儀即仏法」といい、日常の立ち居振る舞いすべてが修行の場であり、浴室は寺院の伝統的な伽藍配置の建物の一つと言うだけでなく、修行の上で「心」と「体」の垢を落とすという意味で、重要な役割を果たしています。 この宣明を称せられるのは、皇室、及び将軍家に限られ、足利義満が創建した相国寺の浴室も宣明と称せられました。 平成十九年(2007)に京都府指定有形文化財となりました。