平成 24〜25年度
教化活動委員会特別研修会
「僧侶に必要なリーガルマインド、僧侶のための法律知識」
講師 櫻井圀郎 氏
講師プロフィール
櫻井圀郎
略歴 1947年三重県生。
名古屋大学法学部、同学大学院博士課程(民法専攻)、東京基督神学校、米国フラー神学大学大学院神学高等研究院(組織神学専攻)、高野山大学大学院(密教学専攻)。
日本長老教会神学教師。
東京基督教大学特任教授。
日本私法学会、国際消費者法学会、宗教法学会、日本基督教学会、福音主義神学会、日本リスクマネジメント学会、日本広告学会所属。
国・県・市・公益機関・各種団体の委員・顧問・監事・参事等歴任。
著書
『広告の法的意味〜広告の経済効果と消費者保護〜』、『遺言の作法』、
『教会と宗教法人の法律』、「宗教活動による不法行為と宗教法人の責任」、「宗教法人法の構造とその問題点」、「葬送法の諸問題」、「資産税課税目的による宗教活動判断の是非」、「ペット供養課税処分取消し訴訟判決と宗教判断基準」、「宗教と税制」、「マスメディアン信頼と広告責任」、「公益法人改革三法の概要とその問題点」、「宗教法人の公益性と地方税」、「個人情報保護と個人の情報・秘密」、「パブリシティ責任」、「教会音楽と著作権・著作隣接権」、「伝道牧会とリーガルマインド」、連載「マスコミ法」(135回以上)、
連載「編集者のためのリーガルマインド養成講座」(99回)ほか多数。
講師より
古来、諸文明において、宗教と法律とは、人間社会の、最も基本的で根源的なものとして理解され、実際に社会を律し、秩序づけ、動かす基礎となり、原動力となってきました。
しかし、現代日本では、宗教と法律とは無関係であるかのように教えられており、宗教者の多くも、法律にまったく無頓着となり、宗教が法律や社会を基礎づけていた事実を忘れ、逆に、社会や法律を無視した宗教活動を行ってはいないでしょうか。
今、日本や世界が、自然環境、政治、経済、産業、教育、家庭、倫理道徳、食料、科学技術など、あらゆる面で著しく歪んできていますが、その責任の一端は、宗教本来の使命を果たしてこなかった宗教者にあるとも言えます。それほど、宗教のもつ意義は大きく、責任もまた重大なのです。
今、誤った方向で「宗教の公益性」が云々されていますが、人間社会を基礎づけるという、宗教本来の使命を果たすことが、まさに宗教の公益性なのです。そのために、宗教者は社会の諸事に強い関心を持ち、深い洞察と広い見識とをもって、活動していかなければなりません。
何事も法律で定めて行うという法律主義の我が国では、法律を知ることは、社会の全般を知る好機であり、宗教活動の方向もまた見えてきます。
宗教者・宗教団体・宗教法人の側面では、法律を知らずに活動することは無謀であり、時には、重大な不法行為や違法行為・犯罪を犯すことにもなってしまいます。逆に、法律を知ることは、正当な宗教活動を保障する基礎でもあります。「権利の上に眠るものは権利を得ず」という法諺がありますが、日本国憲法も「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(12条)と定めています。
今、宗教課税が静かに進行し、宗教活動の規制が静かに広まっているように感じられますが、それを容認してきたのは、法律嫌いで、法律知らずで過ごしてきた宗教者だったのではないかとも思われます。
そのようなことを踏まえながら、僧侶に直接・間接に関係すると思われる、実際的・実践的な問題を取り上げ、法律に関心を持ち、興味を持っていただき、法律に関する知識を深めていただき、法律を好きになっていただき、法律に影響を与える者となっていただきたく、この連続講座を展開したいと考えています。
僧侶の皆さんの積極的なご参加と忌憚のないご意見・自由な質問を期待いたします。
日程 / 詳細
●平成24年(2012年)
2012年4月19日(木)
(第1回)総論1
「教法同源 〜宗教と法律は本来同一。両者を分離した近代国家の混乱〜」
「東西の法意識 〜中国の律令と西欧の法律の根本的な相違。明治以降の混乱〜」
2012年5月10日(木)
(第2回)民事法1
「法人とは何? 〜個人と法人の違い。営利法人と公益法人と宗教法人〜」
「Yes か? No か? 〜意思中心の西欧法。日本の曖昧さとのギャップ〜」
2012年5月24日(木)
(第3回)民事法2
「怠け者は権利を奪われる 〜取得時効と消滅時効。除斥期間、申請期間〜」
「隣地との関係 〜法律で定められているお互いの権利と義務〜」
2012年6月22日(金)
(第4回)民事法3
「僧侶と寺院・宗門との法律関係 〜雇用、委任、請負、派遣〜」
「信仰と契約意識 〜宗教音痴が招いた、オレオレ詐欺や消費者被害〜」
2012年8月23日(木)
(第5回)民事法4
「寺院の忘れ物・預り物と不測の事故にどう対応? 〜事務管理と不法行為〜」
「檀家の家族問題 〜婚姻、離婚、親子、養子、特別養子、禁治産、後見〜」
2012年9月6日(木)
(第6回)民事法5
「高齢者の介護と福祉 〜扶養義務、成年後見〜」
「相続と遺言に関する基礎知識」
2012年10月25日(木)
(第7回)民事法総括
2012年11月9日(金)
(第8回)刑事法1
「僧侶なら知っておきたい 〜刑法で寺院や宗教活動が守られている〜」
「僧侶なら知らないと 〜刑法で守られる信徒、刑法で禁じられる行為〜」
「突然来られても驚かないために 〜逮捕とは? 刑務所・少年院とは?〜」
2012年11月29日(木)
(第9回)行政法1
「僧侶への課税 〜所得税と贈与税に関する基礎知識〜」
「寺院への課税 〜法人税と固定資産税に関する基礎知識〜」
「宗教活動への課税 〜法人税と消費税と印紙税に関する基礎知識〜」
2012年12月6日(木)
(第10回)行政法2
「都市計画法と寺院 〜境内建物の建築規制。建築基準法・消防法〜」
「墓地埋葬法と寺院 〜墳墓と納骨堂と墓地と霊園、水葬・自然葬・樹木葬〜」
●平成25年(2013年)
2013年1月23日(水)
(第11回)行政法3
「宗教法人とは何か? 〜他の法人と宗教法人の決定的な違い〜」
「区別が必要な、宗教団体と宗教法人 〜両者の混同が混乱を招く〜」
2013年1月30日(水)
(第12回)宗教法人法1
「宗教法人とは何か? 〜他の法人と宗教法人の決定的な違い〜」
「区別が必要な、宗教団体と宗教法人 〜両者の混同が混乱を招く〜」
「国法と宗法 〜両者の位置づけと意味・効力。知られていない宗法の問題〜」
2013年2月7日(木)
(第13回)宗教法人法2
「宗教法人とは何か? 〜他の法人と宗教法人の決定的な違い〜」
「区別が必要な、宗教団体と宗教法人 〜両者の混同が混乱を招く〜」
「国法と宗法 〜両者の位置づけと意味・効力。知られていない宗法の問題〜」
2013年2月21日(木)
(第14回)税法
「宗教と税 〜近年深刻化する宗教課税の意味〜」
2013年3月21日(木)
(第15回)知的財産法1
「『境内では撮影禁止』は有効か? 〜違反して撮影した写真はどうなる?〜」
「境内建物を撮った写真 〜著作権、意匠権、パブリシティ権、宗教的権威〜」
「僧侶を撮った写真 〜肖像権、パブリシティ権、プライバシー、著作権〜」
「信徒・参拝者を撮った写真 〜肖像権、プライバシー、パブリシティ権〜」
「説教と著作権 〜録音・録画・筆記・印刷・出版・放送・ネット掲示〜」
「特許権・実用新案権・意匠権・商標権・氏名権・パブリシティと著作権」
2013年4月11日(木)
(第16回)社会法1
「寺院の広告・CMは禁止? 〜知られていない新聞広告基準・民間放送基準〜」
「宗教活動と商取引の狭間で 〜特定商取引法・風俗営業法などの適用〜」
「寺院と文化財 〜宗教活動と文化財の保護にからむ権利と義務〜」
2013年4月25日(木)
(第17回)社会法2
「宗教活動と社会問題 〜青少年健全育成条例・暴力団排除条例など〜」
「国際関係と宗教 〜旅券法、出入国管理法、外国人登録法、関税法など〜」
2013年5月23日(木)
(第18回)憲法
「知っておきたい基本的人権」
「『信教の自由』とは何か?」
「寺院に意味のある『罪刑法定主義』『租税法律主義』」
2013年6月27日(木)
(第19回)総括
時間
講義 13:30 − 15:20
質疑 15:30 − 16:30
※尚、都合により日程、演題をやむを得ず変更する場合がありますのでご了承下さい。
対象 僧侶
参加費 無料
場所 承天閣二階講堂
申し込み
研修会は終了いたしました。
講義録は準備中です。